(この記事の内容は、人によっては不快かもしれません。繊細な方は読まないことをおすすめします。)
彼の人生もあるので詳しいことは書けないけど、
彼はアメリカ人で、緑の瞳をしていた。
髪はブロンドで、絵に描いたような美しい白人だった。(ほんとだぞ笑)
彼は元グリーンベレーで、なぜかわからないけどひょこっと日本にいた。日本にいる理由を話してくれたような気もするけど、よく覚えていない。
確か、仕事で寄港して、日本のあまりの自由さと美しさに感銘を受けてそのまま船を降りてしまった、とかだったような気もする。
軍人をやめてから、日本で固い仕事をしているので隠しているが、体には数え切れないほどのタトゥーが刻まれていた。
そのタトゥーのどれにも意味があって、そのひとつひとつの意味を愛しそうに話していたように記憶している。(これも、おぼえてないけど。)
私がタトゥーに偏見がないのは彼の影響もあると思う。軍人のタトゥーは、片時も忘れたくない家族のことだったり、辛い訓練や戦地で心の支えになるものだったりするのだと、体に刻んで一心同体になるのだと、彼は話していた。
(もしかしたら、今、彼は私のこともタトゥーにしているかもしれない。笑)
彼は「僕は軍人として船に乗る前に、妹と唇でキスをしたんだ。そっとね。日本ではキスはセックスの始まりにしかしないけど、アメリカでは身近な愛情表現なんだよ。」とも教えてくれた。
彼は私を13歳と知ってたと思うんだけど、そんなの気にしてない、と言うか、私に夢中で、気にできないようだった。
今思い出せば、必死さを悟られないように紳士的に振る舞っていたのだろう。
「とにかく私と少しでも長く居たい」「愛しくてたまらない」って気持ちがいつも伝わってくるような、そういう触れ方や話し方、見つめ方をしていた。
私が今も「相手が自分のことを本当に大切に思ってるかどうか」態度でわかるのは、彼のデータベースが大きな影響を与えている。
彼とデートしたのはたった1回で、それも半日くらい。それなのに、その日のことを、私も彼もとてもよく覚えている(はず)。
当時の私は、大人と出かけるのをデートだと思ってもいなかったけど、今振り返るとあの日は、彼が、まだ少女の私に一生懸命用意してくれたデートだった。
その日見た景色は、記憶の片隅で一度も曇ることなく、小さく光り続けてくれている。
人生の中でも、とても大切な日。
私にとってそれは、空からはらはらと落ちてきて、私の胸の一部にぺたっと張り付いてしまった、金箔のようなもの。
一度だけ訪れた、不思議な時間。
いつか、タイムマシンが出来たら、
私はあの日をこっそり見にいってみたい。
あの時の私は幼くて無邪気で、彼にとても失礼な態度をとっていたと思う。
それでも優しく包み込んでくれた彼に、大人の私で、時を超えてこっそりお礼をしたいと思う。
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彼は、ミニクーパーで私を迎えに来てくれた。
色は覚えていない。でもネイビーだったような気もする。
彼はとても、人生を楽しんでいる人だった。
ハーレイにも乗ってた。(乗せて貰えばよかった)
人生で初めて乗った、男の人の車だった。
ドキドキもしなかった。
私にとっては、近所のお兄さんとちょっとお出かけする気持ちだった。
「お気に入りの場所に連れて行くよ」
とだけ言われ、車内で何かを話した記憶もない。
もしかしたら私、寝ちゃってたのかも笑
「寝ていいよ〜」って言われた気もするな。
ついた場所は、静かな小さな港だった。
船はなかった。
海のない街で育った私にはとって、海は新鮮だった。
その頃の私は、大人は、海を見にわざわざ出かけるってことも、海がわざわざ見に行くほど綺麗なことも、まだ何も知らなかった。
「降りて歩こう〜」と言われ
「(何もないのに、わざわざ降りるんだ。)」と思ったのを覚えている。
全く情緒がない。だって13歳だし。許して。
埠頭を歩きながら足元をみると、当たり前にフナムシがザワザワといて、でも私にとっては初めてみる生き物で、動きが面白くて、それも含めて面白かった。
彼は海を見たり、あとたぶん、私と一緒にその彼のお気に入りの海辺に居られることに幸せを感じていたのだろうけど、
私は口にこそ出さないけど、フナムシが面白くて、主に地面を注視してしまっていたような気がする。
その日は快晴で、あの海は今まで私が見たことのない綺麗なブルーグリーンだった。彼があの海を気に入っているのは、彼の目の色と同じだからかもしれない。
彼はきっと今も、あの海に時々行って、私のことを思い出す日があると思う。(違う女の子のことを思う日も、あるかも。)
今の私ならフナムシにも気を取られず、気の利いた会話も出来ると思うんだけど、彼が今、婚姻関係にあるのかどうかも知らないので、それがわかるまでは行けないかな。もう大人だし。
埠頭を歩きながら、彼は「君は僕の大好きな映画の女の子に似ているんだよ。そのものなんだ。」と話してくれた。
彼はとても、繊細でピュアな心の持ち主で、素敵な映画をたくさん知っていた。
元軍人だから、戦争映画にも詳しかったけど、彼が特に愛していたのは、こども向けの粘土映画とか、色彩が素朴な邦画とか、タトゥーだらけの見た目や、ハーレイからは連想されないようなものだった。
人は見かけによらないことも教えてくれたし、私は彼に会ってから、仲良くなりたい人には、職業よりも年齢よりも国籍よりも、「好きな映画」を教えて欲しいなって思うようになった。
(私はたくさんあってこたえられないんだけどね)
「あの映画を観ると、君を思い出すし、ここを歩く君を見ても、あの映画を思い出すんだよ。つまり、あの子は君で、君はあの子なんだよ。」
私はなんて言っていいかわからなくて、ただただ歩いていた。
「すごく可愛くて、純粋で、誰のことも疑わなくて、優しくて、お花とか、星とか、世界が大好きなんだよ。同じでしょ?」
確かに同じだった。その頃の私は、星や月がすごく好きで、夜が来るのが楽しみだった。
気に入ったお花を見つけると、ガラケーで写真を撮って見返していた。
彼は私のことをよく見てくれていた。
そして、はっきり覚えていないんだけど、デイジーか何かのお花を1輪くれたような気がする。
それから、彼はオフィスに私を連れて行ってくれた。
できたばかりの彼のオフィスは、とってもかわいかった。
こどもの観る粘土映画が好きな彼らしい、ファンタジックな壁紙だったり。
お花のぬいぐるみが置いてあったり。
元軍人のオフィスとは思えない雰囲気だった。
オフィスの一角の小さなテレビで、彼は私にそっくりな主人公が登場する映画を観せてくれた。
部屋は広いのに、テレビがなぜか小さくて、テレビの前で体操座りして観ていたような気がする。
途中で、「ね、こんなところがそっくりでしょ。」「ねえこれ君だよね?」と言うもんだから、私はピンと来てなかったけど「そうだね」と
同意することにした。
映画を少し見たら、夕方になったから、帰らなきゃいけなかった。
寮の門限が18:00だったし、できれば17:00くらいに帰らないと、みんなに詮索されそうだった。
立ち上がる直前、彼にハグされて、触れたか触れてないかくらいのキスをされた。
彼は「君からキスしてくれたのが嬉しかった」と言っていたけど、多分私は重心が取れなくてもたれちゃったんだと思う。
でも喜んでるから、そういうことにしておいた。
以降10年以上、そういうことになっている。笑
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彼は「いつか、女の子が生まれたら、君と同じ名前をつけるよ」とそんな素敵なことを言ってくれた。
結局、その後、同じ年くらいの日本人と結婚して、男の子がうまれたけど、言われてみれば少し名前が似てる。
結婚後すぐ、「奥さんが精神病で気が滅入りそう!」ってメールが来てたから、今もまだ結婚生活が続いているのかはわからないけど。笑
でもそんな精神病の奥様をもらうところが、優しくて繊細な彼らしいなと思った。彼ならきっと、泣いていても優しく包み込んでくれると思う。
①で書いたけど、私はこの後スクールカーストで没落していく。
最初に鬼の無双を発揮し、あらゆる女性(生徒・先生どちらも)に目をつけられまくり、どんどん心が濁ってゆく。
そのギリギリ前の、まだ心が澄んでいた頃の出来事だった。
彼は今でも数年に一度私にメッセージを送ってくれる。でもなんとなく、返事はしないことにしている。
You were the best girl I ever met in my life.
That is the truth.
Still love you , always will. Take care .
これは彼がくれた1番新しいメッセージ
私は日本人で、こんな甘い言葉をもらえない女性が多い中、人生のどこかで、こんな言葉をもらえるだけで幸せだと思う。
男からしたら「なんだこいつー!言葉だけ甘くて、結局幸せにしてないやないかーい!」と思うだろうけど、言葉ってすごいんだよ?
だから恥ずかしがらずに、好きな女の子にはその時の胸のうちにある愛を伝えてあげてくださいね。
女の子は、たった一度もらっただけの愛の言葉に一生心が温まることもありますから。
私の心の中でひときわキラキラしてる日の話でした。
終わり。